「いいの?彼氏と一緒になのに電話なんかしてて」


『あ、うん。大丈夫。あっ、ちょっと待ってて?』


「うん」



耳元にガサガサ音が響く。


多分、あずが電話の押さえた音だ。



『ゴメン』


「いや、いいけど……』


『彼、コンビニに行って来るって』


「そうなんだ」



ラブホじゃなくて彼氏の部屋だったのか。



『で、どうだったの?』


「どうって?」


『だから昼間のこと。あの子と話をしたんでしょ?』


「あーうん……。私ね、成宮と別れることにするわ」



私はそう明るく言った。



『えっ?本気?あの子になんか言われたの?』


「本気って、私は成宮のことなんて何とも思ってないよ?あの子、成宮のことが好きなんだって」


『あわぁ!マジで?あの子、結構可愛かったよねぇ?そんな子が成宮を好きだなんて』


「でしょ?私もビックリよ。成宮って案外とモテる?とか思っちゃった」


『でも、優月?本当にいいの?」


「いいんだって!自分のことを想われてない女と付き合うより、自分のことを想ってくれる子と付き合った方が成宮も幸せなんじゃない?それにさ……」



私はそこで言葉を切った。



『それに、何?』



あずが少しだけ声のトーンを下げてそう聞いてきた。