「…ごめんなさい。 私、何も知らなくて…本当に私、迷惑かけてばかり…」

「いや、驚かせる為に準備してるのに、知ってたら困るよ」

「あ…確かに、そうですね…」


「でもな、正直戸惑ったよ。
準備万端でお前を迎えに行ったら、俺が言おうとしてたこととおんなじセリフをお前が言っちまうんだもんなぁ」


苦笑する龍輝さんの言葉に、顔がカーッと熱くなっていく。




“…私は一生、龍輝さんのものですから。
だから龍輝さんも、一生、私のものでいてください。”




あの時は、思ったことをそのまま口に出して言っちゃったけど…でも思い返せば、確かにプロポーズ…。

うわ…私、龍輝さんにプロポーズしてたんだ…。
龍輝さんが準備してきたモノを知らなかったとしても、でも私は、それを壊してしまった…。




「…本当に、ごめんなさい…」


さっきの嬉し涙とは違った涙が、溢れそうになる。
だけど龍輝さんは、微笑みながら私の手をそっと握った。


「同じ想いで居てくれて嬉しいよ。
すれ違うこともあるけれど、でも、今は一緒だった。それでいい」

「…はい」


龍輝さんの言葉に、なんとか微笑みを返す。
と、その時。 龍輝さんの表情が少しだけ曇る。


「…さっき“結婚”って言ったけど…実際に籍を入れるのは、お前が高校を卒業したあとになると思う。
親への挨拶とか、会社への報告とか、世間体とか…今すぐってのは、色々まずいかな、と」

「…もー、それくらいちゃんとわかってますよー。
せっかくの雰囲気、壊さないでください」

「あー…ごめん…。
ついでに言うと、指輪もまだ用意出来てない」

「…むしろ、指輪の話を先にするべきじゃないですか?」


そう言った私に、龍輝さんは困ったように笑みを浮かべる。


そこに声をかけてきたのは、食事をがっつく大雅さんだった。