「真由ちゃん、久しぶりー」


ふわふわの優しい笑顔で迎えてくれた新田くんのお母さん。

だけどその右腕はギプスで固定され、右足にも包帯が巻かれている。




「聞いてよー自転車で転んじゃったの!
で、ずーっと痛いから病院に行って見てもらったらね、骨折ですって。
骨折なんて小学校の時以来だわぁ」


…転んで骨折…。
なのにお母さんは、何故だか楽しそうに笑ってる。

そこでため息をついたのは、新田くんだった。


「…見ての通り、右が使えないのでブーケが作れません。
だから予約の分は俺が母に習いながら作ります。
が、その間に店に出てくれる人が居なくて困ってるんです」

「そうなのよー。 この前バイトさんも辞めちゃってね、人手不足なの。
あちこち知り合いの子にも声かけたんだけど、すぐには無理らしくて」


「…だから先輩、数日間だけでいいので、お手伝いして頂けませんか?
店を閉めて予約の分だけ、とも思ったんですが、花を見に来てくれる方々を、ガッカリさせたくないんです」

「来週には新しい子が来てくれるから、一週間だけでいいの。 ね、お願い」


ウルウルと子犬のように私を見つめるお母さんと、本当に困った顔の新田くん。

これは…、うん、断れる雰囲気じゃない。
けど、昼間は学校があるから、無理だよね…。



「えと…、お手伝いしたいんですが…学校があるので、正直、難しいと思います」


思っていたことを素直に話すと、新田くんが即座に答える。


「昼間は俺一人で回します。
先輩は、学校が終わったあとに来てください」

「え?」