「俺の傘に入っていきますか? 先輩」


そんな声が廊下の向こう側から聞こえた。


えっと…誰だっけ?

私を「先輩」と呼ぶんだから、年下ってことだよね。

んー、大人っぽいなぁ。
私よりも「先輩」って感じのする人だ。


「………」


…ジーッとその人を見るけど、見覚えすら無い。

茶髪にピアス、制服の着こなしなんかは大雅さんに似ているけれど…、でもやっぱり、知らない人だ。




そんな私の視線に気付いたのか、その人がにっこりと笑う。


「1年2組、新田 春樹(ニッタ ハルキ)です」

「あ…1年生…」

「うん」


ゆっくりと近づいてくる新田くん。

その手にある傘をそっと私に差し出す。




「どうぞ、“四聖獣”龍輝さんの彼女さん」

「え?」


この人、龍輝さんを知ってるの?