「お父さんのせいで……私、すっごい苦労してるんだよ!?」
「いや、そんなこと言われても……」
声の感じから千尋だと判明できる。
しかし、また小声になってしまったので聞こえなくなってしまった。
もっと話を聞こうと、恵一がドアの鍵穴に耳をつける。
それを引き剥がそうと、紘哉と羽兎が彼の肩をつかむ。
己の利益しか考えていない輩。
ドアの前で、無言の争奪戦が始まった。
なかなか決着が着かず、三人の体力は徐々に削られていった。
二人を押し退け、紘哉が耳をつけたその時。
「誰かがこっちに来る……!」
ドアの向こうから、こちらへ向かってくる足音が聞こえた。



