「アレは、なるべくなら使いたくない」
「えっ?何で?」
「人を騙すのには変わり無いだろ。アレは、あくまでも最終手段だから。訊けるもんなら、あんな手を使わないで脅してでも聞き出す」
「紘哉……お前、変わったな」
恵一は、しみじみと彼を見る。
ちょっと前までは、目的の為ならば手段を問わない男だった。
それなのに、今回は最終兵器を使うことを渋っている。
本人は気付いていないようだが、彼の中で小さな変化が起きているようだ。
不思議そうな顔をする紘哉に向かって、恵一が小さく言う。
「いいこと教えてやろうか?」
「何?」
「実はチーって――」
恵一の言葉を聞いた瞬間、紘哉の顔色が変わった。
本当か、と訊く紘哉に対し、恵一は自信満々に頷く。
「……分かった。そう言う状況になったらやってみる」
「紘哉、お前最低だな」
「お前もな」
恵一がニヤリと笑う。
紘哉も不敵に微笑み返した。
最低な野郎共、ここに誕生。