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「取り敢えず、こんなもんだろ」
しばらく机に向かっていた紘哉がようやく顔を上げた。
途端に眠そうな顔をした二人が、紘哉の方をゆっくりと向く。
「……人が頑張ってるのに、何だよその変な顔は」
「だって、何も聞こえないんだもん。このMD」
羽兎が欠伸をしながら言う。
聞き始めてから45分程経つが、音楽らしい物は何一つとして聞こえてこなかった。
無音。
ただ、MDの時間が進んでいくだけだ。
「早送りしたいんだけどさ、もうここまで来たら何か頑張りたいんだよね!」
「はいはい。なら頑張れよ」
適当にあしらいつつ、もう一度メモを見る。
そして、紘哉は小さく唸った。
「信夫さんのアリバイだけ、時間訊いてくるの忘れた……」
「お前らしくないな!」



