「キミだって、お父さんを犯罪者にしたくないでしょ?」
「そりゃあ、そうだけど……」
「だったら、オレの言うこと聞けるよね?」
有無を言わさぬ男の目。
紘子は黙って頷く。
「キミの家の物置に、茶色い紙袋が置いてある。それを持ってきてほしい」
「どこに……?」
「そうだな……23時に、裏山の入り口なんかでどうかな。誰にも見つからないように来てね」
「……」
何なのだろう、この人は。
呆然とする紘子をよそに、男は持っていた鞄を漁る。
「それと……これはキミの家の冷蔵庫に」
お金は貰ってるから大丈夫だよ、とニコッと笑いながら、男は紘子にイチゴ牛乳を押し付けた。
彼は彼女の頭を優しく叩くと、新井家を出ていった。
「お父さん、本当にイチゴ製品買ってたんだ……」
男の背中を見送りながら、紘子は小さく息を吐いた。



