こちらミクモ探偵事務所5


「キミだって、お父さんを犯罪者にしたくないでしょ?」

「そりゃあ、そうだけど……」

「だったら、オレの言うこと聞けるよね?」

有無を言わさぬ男の目。
紘子は黙って頷く。

「キミの家の物置に、茶色い紙袋が置いてある。それを持ってきてほしい」

「どこに……?」

「そうだな……23時に、裏山の入り口なんかでどうかな。誰にも見つからないように来てね」

「……」

何なのだろう、この人は。
呆然とする紘子をよそに、男は持っていた鞄を漁る。

「それと……これはキミの家の冷蔵庫に」

お金は貰ってるから大丈夫だよ、とニコッと笑いながら、男は紘子にイチゴ牛乳を押し付けた。
彼は彼女の頭を優しく叩くと、新井家を出ていった。

「お父さん、本当にイチゴ製品買ってたんだ……」

男の背中を見送りながら、紘子は小さく息を吐いた。