こちらミクモ探偵事務所5


「いや、今はいませんが……」

反射的にそう答えてしまった。
セールスマンは少し残念そうな顔をした後、ニッコリと笑った。

「じゃあ、キミが信夫さんの代わりをして欲しいな」

「え?どういう事?」

男は愉しそうに目を細め、一歩ずつこちらへ近付いてくる。
紘子の背中に悪寒が走った。

このセールスマン、ただ者ではない。

「キミももう大きいんだから、自分のお父さんがしている事くらい、薄々と感づいているよね……紘子ちゃん」

「どうして私の名前を……!」

「オレが知らないことは無いよ」

紘子は口をあんぐり開け、目の前に立つ長身の男を見つめた。