「いや、今はいませんが……」
反射的にそう答えてしまった。
セールスマンは少し残念そうな顔をした後、ニッコリと笑った。
「じゃあ、キミが信夫さんの代わりをして欲しいな」
「え?どういう事?」
男は愉しそうに目を細め、一歩ずつこちらへ近付いてくる。
紘子の背中に悪寒が走った。
このセールスマン、ただ者ではない。
「キミももう大きいんだから、自分のお父さんがしている事くらい、薄々と感づいているよね……紘子ちゃん」
「どうして私の名前を……!」
「オレが知らないことは無いよ」
紘子は口をあんぐり開け、目の前に立つ長身の男を見つめた。



