「はーい、どちら様ですかー?」
『あ、いつもお世話になっております。イチゴ販売の者です』
「……!」
インターホンから聞こえてくる、軽い感じの男の声。
間違いない、いつも来るイチゴのセールスマンだ。
普段なら父親に変わるところだが、今はいない。
紘子はインターホンを切り、玄関のドアを急いで開けた。
真ん中に分けた、ストレートの黒髪。
黒縁眼鏡から覗く、真面目そうな目。
左目の下の、小さな泣き黒子。
スーツをかっちり着た、いかにもセールスマンの男は、紘子の姿を見るなり不思議そうな顔をした。
「こんにちは……あれ?信夫さんはいらっしゃいますか?」



