由愛は"可愛い"という話もよく聞いていた。

こんなに綺麗なのに、どうして彼氏とかいないのかな?




「ねぇ。
由愛は本当に彼氏いないの?」

何気無く口にした質問。

由愛は携帯を触っていた指の動きを止めてしまった。


『だからっ、
いないって言ってんでしょ。
なぁに?あたしそこまで男好きに見える?』

まるで動揺を隠すように、ジュースへと手を伸ばす。


「あ、そういう意味じゃないよ!?ただ、気になっただけ」

『あぁ、そうなの。
李羽はどうなのよ?』


"話の軸を自分からずらしたい"

そう訴えるように、由愛は早口で私に聞いていた。


…私?
私はどうなんだろ。

好きな人は――




「…いないよ。
私が彼氏なんている訳ないじゃん。好きな人さえ…いないのに」

本音なのか嘘なのか、自分でも分からない。

ただ一瞬、一瞬だけ…
恭哉の顔が浮かんだ。



『ふーん、いないんだ。
あたしてっきり、恭哉君だっけ?あの子が好きなのかと思ってたよ』

今正に考えていた人の名前が飛び出す。

心臓がドキッ…と反応を示した。


「ううん、違うよ。
友達だよ。恭哉はただの友達」

"ただの友達"
この部分をやけに強調していた私。

由愛は何かを感じた取ったように、真剣な面持ちになった。