由愛と約束していた日曜日がやってきた。

私は由愛にファッション系のお店が集まる、駅前のビルに連れてきてもらっていた。




右に人。
左にも人。

周囲をここまで人に埋め尽されたのは、学校以外では初めて。

そのあまりの人の多さに、私は早速入り口で立ち尽くす。



『李羽、どうしたのよ?
そんなとこつっ立ってたら置いてくよ』

少し前で由愛が肩越しに私を振り返る。


「だって、こんな人多いとこ初めて来たから。なんかびっくりしちゃって」

『もう、何言ってんの。
ド田舎から出てきたみたいなこと言わないでよね。ほら、行くよ!!』


手を引っ張られ、由愛についていくような感じで歩き出す。

スタスタと人を掻き分けて進んでいく背中。


本当に由愛は頼もしい性格してるなぁ。

まるでお姉さんみたい。


はぐれないように、しっかり手を握り返した。






由愛はいろいろなお店に連れていってくれた。


『李羽にはこれが似合うかも』

そう言って、優柔不断な私に代わって一着、服を選んでくれたのが嬉しかった。

普通の女の子にとってはこんなの、当たり前の日常の一部でしかないのかな。





『どう?
初めてのパッセは。
楽しかったでしょ?』

ファーストフード店に入った私達。

座ってすぐ、由愛が聞いてきた。



「変に緊張しちゃった。
でも楽しかったよ!!この服、ありがとう」

ショップ袋を片手に笑うと、

『どーいたしまして。
あんた細いんだから、もっとオシャレすればいいのよ』

得意気に話して、由愛も微笑みを返してくれた。


私はガンで病院にいる時、体重を減らしてしまっただけ。

全然健康的に痩せてるわけじゃないの。

そういう由愛の方が、モデル体型だと思うんだけどな。