『同じ空気を持つ者同士でしか分かり合えないこともあるだろ?それで、気付いたら助けてた』

少年の瞳が優しい光を放つ。


街灯の灯りを受け、影を帯る顔。

不覚にもカッコイイと思ってしまった。


ダメよ。
何考えてるの?

こいつだって男だ。

男はもう信じないって"あの夜"に決めたじゃない。




「じゃ、無意識の内に人助けしてたってこと?おめでたい奴ね」

バカにしたような笑い声を含ませてしまった。

あたしって、どれだけ嫌な女なんだろう。


「あんたも見たでしょ。
あたしは援交してんのよ。あんたがあたしの何を分かってくれるの?どうせ心の底ではあたしを"汚い"とバカにしてるくせに」

『…そうだね。
綺麗とは思えない。
でも、俺の姉貴も似たような事してる。多分だけど』

一瞬、少年は辛そうに顔を歪ませた。



『それに、君は本当は止めたいんでしょ?じゃなきゃ、俺を相手になんかしないよ。相当な理由がないなら、早く止めた方がいい。自分自身のために』


言い終わると、少年はポケットから小さな紙切れを取り出した。

それをあたしに差し出す。



「何よ?」

『俺の番号』

「そんなの…いらない」

『いいから。
一人で抱えきれなくなったら電話して』

笑ってじゃない。
真剣な表情で言ってくれた。


そして、ほぼ強引にあたしに紙切れを握らせた。