振り向くと、同い年位の一人の少年。
背はあたしより頭一個分高くて、ワックスでセットされた茶髪。
右耳にだけしているピアスが印象的。
カッコイイというより、綺麗と思うような顔立ち。
あたしにしては珍しく、思わず見惚れてしまった。
『嫌がる女の子、無理矢理ホテルに連れこんだりするのは犯罪ですよ』
穏やかな口調だけど、言い返せない迫力がある。
そう男に言った後、少年はあたしの手を解放してくれた。
『なんだお前は!!』
その鋭い目付きに圧倒されながらも、男はまだ食い下がる。
『なんだって言われてもな…通りすがり?』
頭を掻きながら首を傾げる。
同時にさりげなく、あたしを庇うように前に立ってくれた。
『なら、子供は引っ込んどけよ。由愛ちゃん行こう』
男があたしに手を伸ばす。
あたしの手に触れる一歩手前で少年がその手を掴んだ。
『だから、無理矢理は止めた方がいいですって。おじさんだって、警察呼ばれたら会社大変でしょ?』
どことなく皮肉るような言い方で少年はニコッと笑った。
