『私も綺麗事信じなくなっちゃったけど、バカにする人よりは綺麗事を言える人になりたいから』

少女は柔らかく微笑んだ。


あたしにはこの子が、
真っ白に見える。

とても純粋に思えた。


あたしとは全く正反対の世界に住んでるんだろう。




特別可愛いという訳ではないのに、この子が――

とても綺麗に感じた。






「無理よ…。
こんなに広いんだから、四葉なんて簡単に見付からないよ」

その真っ白な心を汚すように、あたしからは否定的な言葉が飛び出す。


『うん、ここ広いよね。
一人で探してたら日が暮れそう。あ、一緒に探してくれない?』

期待の眼差しを向けられる。


あたしが?
このあたしが四葉探し?



「冗談じゃないわ。
絶対に見付からない。
あたしなんかじゃ…見付からない」

こんな汚れたあたしが、幸運のシンボルを見付けられる訳がない。


『そう?
私よりも、すぐ見付けられそうな気がしたんだけどな』

少女はキョトンとした表情で平然と言って退けた。



「なんでそんなこと言えるのよ」

素直に喜べず、またキツイ口調で言い返してしまう。




『だって…見えたから。
あなたは傷付きながらも、必死に幸せを探してるように見えたから――。
私はもう、それすら諦めちゃったんだ』

無邪気な声で笑った。

目はとても哀しそうな色で満ちていた。




何故だろう?


この子の言葉は、すんなり受け入れられる。
あたしの心にスッと入り込んでくるよ。





『やっぱり、
一人で探すしかないね』

少女はまた地面にしゃがむ。
視界からあたしが消えた。




時計を見ると、マヤとの待ち合わせまで1時間しかない。

早く用意を済ませないと。



なんだか後ろ髪を引かれる思いで、あたしは家へと急いだ。