少女は怯まずに何故か哀しそうな目をする。


「だから、何なのよ?!」

対してあたしは敵意剥き出しの喧嘩口調。

完璧な【由愛】を作っていなかった。



忘れてた訳じゃない。
学校外だからでもない。

この子の前では作っても意味がない。
不思議とそんな感じがした。




『痛そうだなぁ…って思って』

小さい、
今にも消えそうな声。


「はッ?
怪我なんかしてないわよ。
あんたバカじゃないの?」

鼻で笑ってやった。

その態度とは裏腹に、震えるあたしの声。



少女がゆっくり立ち上がる。

そのまま、何の迷いもなくこっちに歩み寄った。



「ちょ、来ないでよ!!」

噛みつくように言ってみる。

あたしの真ん前で動きを止めた。



無言であたしを見つめる少女の瞳が…怖い。

綺麗過ぎると感じる、
この子の瞳が怖い。



ゆっくりとした動作で、少女はスッとあたしの胸元を指差す。

そして、相変わらず小さいけど凛とした声で言った。



『心…すごい痛そう』


その言葉があたしの世界に留まった。


この子の目には、あたしの何が映ってるんだろう。

きっと今のあたし、
間抜けな顔してんだろうな。






『大丈夫?』

少女が首を傾げる。

「別に、なんも痛くなんか…ないよ。訳わかんないわね、あんた」


あぁ、なんでこんな八つ当たりみたいなこと言ってしまうんだろう。

本当にこの性格やだな。