ミノリに偉そうなこと言ってるけど…

あたしだって蒼に同じ事されたとしたら、多分心のどこかでは蒼を庇ってしまうと思う。


やっぱり優しくされたら、人は少なからずその優しさを肯定したくなってしまうんだよ。






『所詮ミノリはお遊びなのかな。こんな汚いあたしを…好きになってくれる人なんかおらんよね』

ミノリは寂しそうにポツリと零した。


何かを言ってあげたかったけど、慰めの言葉すら浮かんでくれなくて。

下手なことを言ってミノリを更に追い込んでしまわないように、あたしは固く口を結んだ。





『せっかく来てくれたのに、ごめん。ミノリ帰るね』

立ち上がりながら指で涙を拭う。

『あ、送ってこっか?』

『ううん。
一人で帰るよ、シュウちゃんもありがと』


消えそうな笑みを残し、ミノリはあたし達に華奢な背中を向けた。




『行ったげなくていいのか?』

シュウが目でミノリを示す。


あんなにも儚い後ろ姿。

恐らく彼女の両親は、今夜も家にはいないのだろう。



どうにかしてあげたいけど…ミノリだって言ってたよね。

”傷の舐め合いにしかならない”と。


随分薄情かもしれない。

でも、あたし達2人が寄り添っても結局はその通りにしかならないんだ。

あたしじゃ、あんたの傷を塞いであげられないんだよ…