ミノリの言ってることから考えて、あの男の女にでも遭遇したんだろうか。



『ユキちゃんと歩いてたら、急に女の人が現れてさぁ』

ユキちゃんとは恐らくあの男の名前。

ミノリはよく男をちゃん付けで呼んでいた。





『”なんでこんな年下の女連れてるの?!”って、すごい剣幕でユキちゃんに詰め寄ったん。
ユキちゃんは”お前には関係ない”って言ってくれたけど。なんとその女、倦怠期に入ってたユキちゃんの彼女だったの。
そこから2人の口論が始まったんよね』

さっきとは打って変わり、ミノリは淡々とした口調。


『それでね、ユキちゃんに散々言った後、標的がミノリになったの。
”今すぐユキと別れてよ!!”って。急にミノリの頬ひっかいてきたんだよ。
ミノリもやり返しちゃって、2人でゴタゴタやってたら…普通に路上やったから警備員みたいなのが止めにきた。そしたら…』

マスカラも落ちてきたミノリの目に再び涙が浮かぶ。



『ユキちゃんね、ミノリじゃなくて、その女の手を引いて走ってっちゃったんだよ…』

ツゥ…と涙が頬を伝った。





『うわぁ…
気まずいってゆーか、嫌な男。そこで女と一緒に逃げなくてもなぁ』

腕組しながらシュウは同情します。といった表情。



ミノリのその表情を見てても、話を聞いててもミノリが辛いというのはよく分かる。

だけど、イマイチ感情移入出来ていないあたしがいた。