「ミノリ?
分かる?あたしよ」

肩を軽く揺らすと、ミノリは焦点の合わない目にあたしを映した。


よほど泣いたのか、目は真っ赤で腫れている。

いつも欠かさずしている付けまつげも、今日はとれていた。




『あれ、由愛ちゃんやぁ〜。ろしたの?』

舌が上手く回っていない。

「"どしたの”じゃないわよ!!なんでこんなになるまで飲んだの?!」


理由はまだ聞かされていないけど、昼間の笑顔とのギャップが痛くて…。

ついキツイ口調になってしまう。



『あははッ。
由愛ちゃん怒ってるー』

人の神経を逆撫でするようにミノリはケラケラ笑い出した。

今の状態じゃ、話にならない。





『な、場所変えよう。俺ミノリ運ぶわ』

言いながらシュウがミノリの肩に腕を回して立たせた。


「どこ行くの?
あんたの家とか嫌よ」

『うわっ、そんな警戒することなくない?もっと信用しろよー』


シュウはあどけない笑顔を見せた後、


『俺は…由愛にあいつみたいなことしないよ』

急に真顔になってそう言った。



その瞳に嘘偽りなんかなく、強い意思を宿していたからこそ…

あたしはシュウを直視出来なかった。


シュウがあいつとは違うと頭で理解していても、やっぱり心まで開く気にはなれないんだよ。