泣き疲れて、私はいつの間にか眠ってしまっていた。


玄関が開く音がして、目が覚めた。


「ただいま。」


ソファで寝ていた私の横に座って、彼が私に顔を近づけた。


「寝てると思って今日はピンポン鳴らさなかったよ。」


いつも鍵を持っているくせに玄関のチャイムを鳴らす彼は、まるで「偉いでしょ?」というような顔で笑ってみせた。


「もう大丈夫。おなか空いたでしょ?何か食べに行こう。」


彼は少し笑って私の体を起こした。


ごはんを食べた帰り、彼が急に家と反対方向に車を走らせていることに気付いた。


「あれ、どこ行くの?」


「夜景見に行きたいって言ってたから。今日天気いいし、少し暖かいから連れていくよ。」


「わーい。」


子どものような反応をする私を見て、彼は笑った。


着くと、そこは真っ暗な空にまるで宝石が散りばめられたようにきれいな夜景があった。


「すごーい!綺麗だね。」


「あんまりはしゃぐとまた具合悪くなるぞ。」


彼は車に積んでいた、私用の小さな毛布を取り出して私にかけた。


夜景を見ながら、今までの二人のことを考えた。


でも、もう心の中で決心がついた。


この夜景のようにとても輝いていた思い出がたくさんある。



もう、離れても大丈夫。