「……ごめんな。一生懸命バイト頑張って、会いに来てくれたのにな」
こぼれ落ちる涙を指先ですくいながら、頬を撫でると、
眞緒は首を横に振り、への字に曲がる口を懸命に動かした。
「あたし、自分が嬉しければそれで良かったんだ。ハル兄のこと、何にも考えてあげてなかった」
「いや、お前を不安にさせたオレが悪い。いくら授業って言っても、女子生徒を個人的に部屋に入れるのはよくないよな。
もちろん、やましいことなんて、全然なかったぞ? どこにも、指一本触れてない」
その言葉に嘘はない。
眞緒は安堵したように小さくうなずいた。
もっと早くに、こうして安心させてやるべきだったと泣き顔を見つめながら思う。


