「置いてきた?」 「……うん」 事情を聞いて、相変わらずのおっちょこちょいさ加減にあきれる。 「ケータイの意味ないだろ、それじゃ」 「うん……でも、」 「でも?」 「……ハル兄から、メールも電話もなかったでしょ? ……だから最近、本当にケータイの意味がなくて……」 「……」 消え入りそうな声に、栗色の頭を見下ろす。 小さな肩がより小さく見えて、オレはイラつく気持ちを静めるように息を吐き出した。