心の中でも声でも、いつでも何度でも呼んでいた名前なのに。 “ハル兄”っていう言葉を発したことに、自分でドキッとする。 それが、 恋人との小さな頃の思い出を聞かれたことに対しての動揺なのか、 それとも、 先輩と一緒にいるこの時間の中で、 ほんの一瞬でもハル兄のことを忘れていた自分に気づいてしまったからなのか。 ……どっちにしても、あんまり良くないことのような気がした。