愛してんで



パシンッ


いつの間にか、奏は席を立って、鈴華の頬を叩いていた。


鈴「いった…!!いきなり何すんのよっ!!」


隆「奏っ!!」


隆太も席を立ち、奏の腕を掴んだ。

店内は静まり返り、時計の音が耳に痛いほど響く。


奏「何で、2人の気持ち、弄ぶねん……2人共、純粋にあんたに惚れただけやん!!」


鈴「はっ?!あんた、同じ寮の…だったら何だって言うのよっ!!関係無いでしょっ!!」


鈴華は、薄く笑うと見下ろしている奏を睨み付けた。


鈴「どーせ、あいつらだって、顔で選んだんじゃないっ!!何が、違うのよっ!!私と一緒じゃないっ!!」


奏「お前と一緒にすんなやっ!!…2人は……あんたの笑顔が好きやって……誰…にでも…隔てなく向ける笑顔が…好きやって……小さな事に気付く心が好きやって……」

奏の言葉に、鈴華は目を逸らす。


奏「…毎日…毎日…嬉しそうに……愛しそうに……私らに話してくんねん……あんたの内面見てるのに……何で…あんたは外見しか見ぃひんねん……」


大粒の涙が、床に落ち跡を残す。

隆太は、後ろから奏を抱き締めた。

小さな肩が、激しく震える。


鈴「なっ…何よっ!心を見せたら、利用されるだけじゃないっ!!」


叫ぶ鈴華は、とても傷付いた目をしていた。

胸元を、ぎゅっと握り締めて。


奏「お願いやから……2人を傷付けんといて……お願い……します……」


奏は、隆太の腕からスルリと抜けると、深々と頭を下げて店を出て行った。