愛してんで



席に付くと、携帯を開く。
時間は、まだ16時。
17時に寮に着いたとしても、夕御飯まで時間はある。

奏は、携帯を閉じ鞄にしまう。

「ねぇ、鈴華ぁ~。最近、一緒にいる格好いい人、誰?」


不意に聞こえた名前に、体が強張る。

振り返ると、窓際に伊月 鈴華と2人の女子が座っていた。


鈴「誠綾の人。」


鈴華の着ている制服は、藍蘭女子の制服では無く、陽真女子の制服だった。


隆「陽真って、この辺だったんだ。奏…?」


会計を済ませた隆太が席に付くと、奏は眉間に皺を寄せて、強く拳を握り締めていた。


「マジッ!!誠綾って、めっちゃお金持ちじゃん!!いぃなぁ。紹介してよ。」

鈴「飽き足らねー。明日、誕生日だって言ったら、遊びに連れて行ってくれるって。沢山、買い物してくるから。」


「悪い奴だよね。あんた、T大の男は?」


高らかに交わされる会話に、隆太の表情が曇る。


鈴「あぁ、あいつ。もぅ飽きたから、会ってない。男なんて、顔とお金でしょ!!」


「あんたの被害者、増えすぎだから。」

鈴「だって、良い男と歩いてたら、気分良いじゃん。ブランドみたいなもの。」

「あんた、顔良いもんね~。羨ましいよ。その美貌、分けて下さい。」


鈴「しょーがないなぁ~。でもダメェ~。」


下品な笑い声に、頭が痛くなる。

2人が好きになった女が、こんな最低だったなんて…

2人に、真剣に向き合ってないなんて…
奏の目から、涙が溢れた。