デート前日
隆「奏、帰りに買い物行こう。」
教室で、隆太の誘いにキョトンとしていると、溜め息をつかれた。
隆「柚と臣のデート前日だろっ?!」
奏「あっ!!美味しいの作らんとな。」
隆「んで、何作る予定?」
奏「柚も臣も、お子ちゃまやから、チーズ入りハンバーグにしよ思ってん。奮発して、【gift】のショコラプリンをデザートにするで」
隆「いいじゃん!喜ぶよ!俺、これから委員会あるから、中庭で待ってて。迎えに行く。」
奏「分かった。」
隆太は、奏に告げると教室を出て行く。
奏も、後に続く様に中庭に向かう。
中庭には、綾がほうきを持って立っていた。
奏「綾っ!中庭の掃除なん?」
綾「奏。面倒だけどなっ。お前は?」
奏「隆太の委員会終わるの、ここで待ってんねん。」
奏は、中庭のベンチに座ると、綾も隣りに座った。
奏「サボリは、あかんで。」
綾「サボリじゃねーよ。殆ど、終わってるし。どっか行くのか?」
奏「隆太と買い物。明日の為に、美味しいご飯、作ろ思てんねん。」
綾「そっかぁ~。楽しみだな。」
奏「綾…?どないしてん?元気無いやん…」
綾「んっ?あ、あぁ…俺、蘭女に知り合い居るんだけど、聞いたら〈伊月 鈴華〉って名前の子、居ないって言ってたんだ。」
奏「はぁっ?!」
綾「それに、蘭女の校則厳しいから、バイトなんて出来る訳無いって…」
奏「何やねん…それ…じゃあ、柚と臣が好きな子は誰っ?!」
綾「わっかんねぇよっ!!言えるのは…蘭女の子じゃねーって事だけだ…」
奏「綾っ!!その事っ!!」
綾「言える訳ねーだろっ!!あいつら、無駄に傷付けるだけだ…」
もう、何も言えなかった。
綾の拳は、痛いくらいに力が籠もっていた。
冷たい風が、辺りを包み込む。


