愛してんで



ある日の夕方


柚と臣は、寮の庭に面したベンチに座って俯いていた。


奏「…どないしたん?風、冷たくなってきたで…」


奏は、温かいココアを柚と臣に渡すと、隣りのベンチに座った。


柚「奏…」


臣「ありがとぅ…」

マグカップからは、白い湯気が立ち上る。


口元へ寄せると、甘い薫りが鼻を擽る。

奏「今日は、鈴華ちゃんと遊ばへんの?」


臣「お友達と、買い物やって。会われへんと、淋しいわ…」

柚「俺ら、鈴華ちゃんの事、ごっつ好きやねん…何か、切ないわ…」


奏「私、2人に聞きたい事あんねん。聞いてもえぇ?」


2人は、無言で頷いた。


奏「どっちかが振られたら…?」


柚「何やねん、突然…」


奏「やって、どっちかと付き合うたら、どっちかが振られる訳やん。」


臣「縁起でもない事、言いなやー。」


奏「彼女出来たら、今までみたいに、2人一緒には居られんくなるやん。羨ましいねん、2人見てると…」


奏は、羨ましかった。ウザい位に仲の良い2人が。

彼女が出来て、一緒に居ない2人を見るのが、無償に淋しく思え、涙を浮かべた。


臣「変わらへんで、何も…彼女が出来ても、俺らは俺らや。」


柚「せやねん。選ぶのは彼女やねん。鈴華ちゃんが、俺を選んでも臣を選んでも、なぁんも変わらん。」


臣「俺らは、ふっっっかぁぁぁいところで、繋がっとんねん。なぁ、柚よ。」


柚「なぁ、臣よ。俺らは、変わらへん。もちろん、昂や綾や大貴や平良や佳康や隆太も、変わらへんで。奏だってな。」

奏「私も…?」


臣「お前も、俺らの繋がりやで。ありがとぅ…心配してくれてたんやな…」


2人の笑顔が、涙で霞む。

優しく頭を撫でてくれる。

涙の向こうに見える、夕日に照らされた2人の姿は、目が眩む位に綺麗だった。