寮で過去に触れる頃、奏は港で沖を眺めていた。


手には、小さな花束を持って。


奏《お兄、元気?また、会いに来たで。》


空を仰ぐ。


海辺の柵に寄りかかり、花束を海へと放り投げた。


パシャッと、水面に小さな音を立てて、花束を波に揺られていた。


女の子「おねえちゃん、どうしてキレイなお花、すてちゃったの?」


隣を見ると、4才くらいの女の子が、悲しい目で奏を見上げていた。


奏「捨てたんやないよ。お姉ちゃんの大好きな人が、海が好きやってん。その人に、あげたんよ。」

奏は、女の子の目線に合わせてしゃがむと、頭を優しく撫でた。