「迷わなかった?」 「うん。ここへはよく来てるから」 「母上とだろ?一人は初めて。どう?緊張した?」 したに決まってる。 でも、言わない。 バカにされるから。 「荷物、それだけ?」 渚はあたしの手荷物を見て言った。 夏休み。 そのほとんどを、彼も住むおばさんの家にお世話になる。 なのに、あたしの荷物は、小さなリュックだけ。 中身は一日分の着替えと、パジャマ。 あとは、春休みにバイトした、おこづかい。