それから、30分後。

思いっきり、遅刻の時間。

ま、こうなるのはわかってたけど。

「ちょっとぉ、ホントに歩いてくの?」

「どーせ遅れるなら、何分でもかわんねーよ。」

「そーだけどさぁ・・。」

まったく、ホントに適当。

あたしは、ぼーっとしながら、

瑠輝の横を歩いた。

「芽紅っ!あぶねぇ!」

「えっ・・?」

なんで、わかんなかったんだろう。

あたしの目の前には、トラックがきてて

・・・やだ!

引かれちゃう!!

「っぶねー。お前、ドコ見てんだよ!」

身体に襲うであろう衝撃を覚悟したあたしは

目を瞑っていた・・・が。

いつまで経っても、

そんな衝撃は襲ってこない。

・・・なんで?

「おい!きいてんのか!?」

そっと目を開けると、

怒ってるような、

心配しているような顔をした

瑠輝の姿があった。

「・・・?」

安心して、涙がこぼれた。

それはわかる。

でも、でも・・・

声が、でない。

「芽紅?」

「っ・・・!」

声が、でない。

『大丈夫だよ。』

そう言いたいのに・・・

声が、でないよ。

「もしかして・・・。声、出ねーのか?」

「・・・。」〔コクコク〕

あたしは、無言で

頷くことしかできなかった。