「…杜山祐磨です」

「じゃー…杜山は開いてる席どこでもいいから座って」

「はい」




 ガタっと椅子を動かす音が聞こえた。





 ホームルームが終わるころには拭き終わった私はバケツと雑巾を片付けて教室に戻った。





「え…」




 たぶん杜山君だろう。




 私の席に座ってる。





 私がじっと見ていたのに気付いたのか、不思議そうな顔でこっちを見る。





 フード越しだからきちんと目が合ってるとかは分からない。





「…何?」

「……そこ、私の…」

「え?」




 教科書とかは全部燃やされてしまって毎回先生に借りてる私は荷物なんかポケットに入ってるケータイと小さな筆記用具くらい。




 机の上には何も置いてなかったから。





 きっと空いてる席だと思ったんだ。