暫く抱き締めてやると落ち着いたのか、くてっと俺に体重を預ける。
「裕磨君、ありがと…もう大丈夫だよ」
「そう…?」
そっと手を解くと、温かい神奈が離れていくのがわかる。
すると、神奈の後ろで気まずそうに立っている紫音が見えた。
「あ…水谷くん…」
「完全に二人の世界に入っちゃってー…もういっそのこと付き合えよ!!」
なんか悪いことしたな……。
「じゃあ神奈も落ち着いたし…野原のとこ行くか?」
俺がそう言うと真剣な表情になった神奈は、頷いた。
神奈の手を取ると、冷たいけど温かさが染みてくる。
「お…俺の話は無視かよ!!」
先に歩き始めた俺らの後ろから叫ぶ声。
「あ、紫音!! 野原どこにいんのー?」
少し笑いながら聞くと嬉しそうに駆け寄ってきた。
「泣きつかれて寝たから保健室連れていった!」
ふふん、と言わんばかりの何故かドヤ顔の紫音を冷たい目で見る。
「俺、優しいだろ?」
「神奈ちゃん、紫音は置いていきましょうか。」
「そうですね、裕磨君。」
シラッと二人で紫音の横を通りすぎた。