「さすがに教室戻りづらいだろ?」
「…少しね。でも慣れちゃった」
私がそう言うと祐磨君は自分のことじゃないのに辛そうな顔をする。
…私、余計なことに巻き込んでしまったのかも。
「…神奈、そんなこと慣れていいもんじゃねぇよ」
「いいの、私は」
「何がいいんだよ…とりあえず授業始まるだろ? 俺は最初からサボるとまずいし戻るけど…」
「うん、私はもう少し残ってく。授業頑張ってね」
すると祐磨君は私のポケットに手を突っ込んで携帯を取り、自分のスマホも手で器用にスライドさせながら何かをいじってポケットに戻した。
「メアド交換しといた。何かあったら気軽に言えよ」
「…ありがと。祐磨君は優しいね」
私がお礼を言うと困った顔をしながら「どっちが」という。
「またあとで来るから」
祐磨君はそう言い残して屋上を出て行った。

