「遅い」
「…ごめんッ…人たくさんいて…」
「早く頂戴よッ」
私の手から野菜ジュースを奪った由麻。
「あ、そう言えば神奈ってコーヒー苦手だったよね」
「え…」
「田中―、あんたのコーヒーもらっていい?」
由麻が田中君にそう聞くと「どうせ神奈持ちだしいいよ」という。
「じゃあ神奈、あんたが自分で買って来たんだから責任もって飲みなよ」
プルトップを開けた由麻は私の頭からコーヒーをかける。
「…ちょっ」
「神奈、あんた頭から飲むの大好きだねー」
「そんなことっ…」
さすがに嫌いなコーヒーの匂いはきつくて、由麻から缶を奪おうとする。
だけど170㎝近い由麻から奪えるはずもなく、どんどん降りかかる。