風邪を引いてしまい、寝込んでいたある日の夜。


薬が聞いているのか、グッスリ眠っていた。



「未亜……」



誰……?


誰かに名前を呼ばれ、半分眠っている状態にも関わらず、耳に神経が集中する。



「未亜、大丈夫?」



心配する様な声。


その声は付き合っている彼と同じ事の声だった。


風邪を引いて弱っているからこそ聞きたい声。



“来てくれたの?”

「勿論だよ。 心配だったから」



私の為に、夜遅くにも関わらず駆け付けてくれた彼。


嬉しくてついほほがゆるむ。


そんな幸せな気持ちも束の間。


私はある事に気がついてしまった。


一人暮らししていて、私のマンションの鍵は彼には渡していない。


それなのにどうして彼は私の部屋にいるんだろう。


オートロックを通り抜けられたとしても、部屋の中に入ってこれる筈がない。


そう思った瞬間、嫌な汗が体を伝った。



「未亜、目を開けて。 僕を見て」



僕?


彼は自分のことを僕なんて言ったことは一度もない。