どの辺がウザイって、なんかもういろいろとウザイ気がしてくる。

“ウザイ女”の基準なんて知らないけど、少なくとも今のあたしは、自分が望んでいた理想の“彼女”じゃない。

怒ったり口出ししたり厚かましく小言を言う“彼女”なんて、あたしは望んでない。

むしろ嫌い。

だけど、今のあたしはそんな“彼女”。

あんなに怒鳴って叫んで金切り声上げて。

ご近所に、痴話喧嘩なんて聞かせるもんじゃないっての。


……あぁ、もうヤダ。


そう、あたしが人生どん底みたいな、最上級の自己嫌悪に陥っていた、まさにその時。



「そこのアスファルトに埋まりそうなおじょーさん。タピオカジュース飲まない?」


頭上から、そんな言葉が降ってきた。

穏やかで紳士的な声色なのに、言ってることはまったくもって支離滅裂。

なんでタピオカジュースなんだ。

いや、そりゃまあ、美味しいけど。

でも今のあたしはタピオカジュースなんて飲む気分じゃないから、顔を上げて断ろうと思った。

だから顔を上げた。

見上げたそこにあった端正な顔立ちに、一瞬呼吸が止まったけど。

目が合って、微笑まれる。


「おじょーさん、リアタイで人生どん底?」

「……どちら様ですか」

「名乗るほどのものじゃないね」

「…………」

「そんな怪しい人を見るような目でお兄さんを見てはいけません」

「じゃあ名乗ってください」

「手厳しいね、おじょーさんは」