無我夢中で飛び出したのに、外の空気を吸った途端に熱が冷めた。
ハッとした。
我に返ったっていうのは、たぶんこれ。
ハルセの住んでるアパートの近くにある、コンビニの駐車場。
どこにでもあるそのコンビニの駐車場で、あたしは車を止める石みたいなヤツに腰掛けて、膝を抱えていた。
自分の膝に顔を埋めて、さっきまでのことを脳内でリプレイする。
リプレイするっていうか、無意識にしちゃうんだけど。
思い出したくないことに限って、何度も頭の中をぐるぐる回る。
ケンカしたのって初めてかもしれない。
友達とか、いつかの彼氏とか、そういう人たちとケンカってものをしたことがなかった。
親ともあんまりケンカしない。
あたしは気持ちが表情に出ないんじゃなくて、出さないのだ。
反論したいことにも、気になったことにも、口出ししない。
相手とぶつかることが好きじゃないから。
だから、正直、さっきのケンカで、一番驚いているのはあたしかもしれない。
あたしって、あんなに怒れたんだ。
……なんて。
「……ハルセのバカ。迎えに来い……」
つい、本音が声になって漏れた。
追いかけてきてくれてもいいのに。
酷いこと言っちゃったけど、でも追いかけてきて欲しかった。
くそう。
ホントのところ、あたしという人間は、結構ウザイ女なのかもしれない。