“ビックリ箱だったら?”


いつか言われた言葉を思い出す。

ホントに、あれはビックリ箱だった。

あたしは悪い方向にしか考えてなくて、だけど実際は、まったくの逆で。

蓋を開けてみれば、それはとても、素敵な答えだった。

もしかしたら、今まで生きてきた中にも、そんなビックリ箱があったのかもしれない。

もったいないこと、してたのかも。

過去を振り返っても、もうどうにもならないけど。

でもこれから見つけていけばいいかな、なんて思ったりする。


だからあたしは、ここに来た。

最初のビックリ箱を開けるために、ここに来た。


「……寒い」

「冬だもん」

「なんでこんな田舎に来る必要があんだよ」

「まあまあ」


あたしは面倒くさがるハルセを引っ張って、軽い下り坂を下りていく。

両側にお店のある坂を下り、目的地を目指す。

冬の早朝はとても寒い。

寒いのが苦手なのは、あたしもハルセも同じだ。

でもあたしは、どうしても“冬に”ここへ来たかった。

どうしてかって。

答えはすぐそこにある。


そう、すぐ、目の前に。