「……さて、御二方?」


ずっと想いに耽っていたあたしの耳に、トーヤの声が届いた。

あたしとハルセは、同時にトーヤへと顔を向ける。

トーヤはさっきと変わらない、掴みづらい表情のままで。


「どうします?このままここに残ってバケツプリンパーティをするか、」

「帰る」

「ハルセくんてばとってもドライアイスー」


即答して立ち上がるハルセに、傷ついたのかなんなのか、楽しそうな色をした声でそういうトーヤ。

やっぱり、真逆かも。

真逆だけど、いい兄弟かも。

お兄さんにいろいろ相談するなんて、ハルセは案外可愛いところがあるんだなあ、なんて。

新しい発見。

あたしの知らないハルセ、発見。

でもそんなハルセも好き。

たぶん絶対、全部好き。


そんなことを思いながら、あたしは玄関のドアを開けたハルセの後に続こうと立ち上がる。

すると、トーヤがあたしに何かを差し出してきた。


「はい、これ」

「?」

「金鱗湖の写真」

「え」

「あげる」


ニコッと笑ったトーヤを見て、写真を見て、あたしはそれを受け取った。


「……ありがとうございます」


お礼を言うと、トーヤはもう一度笑った。


それはきっと、心からの笑顔。