「……はい」
「まあ、兄貴の俺が言うのもなんだけど、ハルセホントは家事してるから」
「え……」
「でも上手くできないっぽくて、いっつもお袋とか俺に電話かけてくるんだよね」
「…………」
「そういうとこ、セナノちゃんには見せたくなかったんだと思う」
そう言って微笑んだトーヤ。
あたしは自然と、ハルセを見た。
何も知らなかった。
よくよく考えれば、あたしがハルセの家に来るのは一ヶ月単位だ。
だけど、溜まってる洗濯物は一ヶ月分じゃなかった。
多くてせいぜい、一週間分。
お皿だって、流しのシンクが見えなくなるほど溜まってたわけじゃない。
……たまにお皿が減っているのは、家事の苦手なハルセが割っちゃったからなのかも。
なんて考えて、慌ててるハルセを想像したら、思わず笑ってしまった。
久しぶりに、心から笑った。
「……セナノ」
いつの間にか顔を上げていたハルセが、驚いたようにあたしを見た。
あたしは笑いながら、ハルセに伝える。
「ヘタレっ」
「なっ……」
「そんなの気にしなくていいのに」
「…………っ」
「カッコ悪いところ見せたら、あたしが嫌いになるって思った?」
「…………」
「なるわけないじゃん。だってあたしは、“ハルセ”が好きなんだから」
なんて言って、ニコリと笑って見せる。
ハルセは意表を突かれた顔をして、少し照れたみたいに、だけどそれを隠すように不機嫌顔で目を逸らした。


