トーヤはテーブルを叩いて爆笑し始めた。

どうしてそんなに笑われなければならないのか。

あたしにとっては大問題だったのに。

イラッとして、微かに眉根を寄せたあたしに、トーヤは笑いながら、


「違う違うっ。ハルセは家事しないんじゃなくて、できないのっ」

「…………。はい?」


思わず聞き返した。

だってハルセは、いつも“めんどくさい”ってそればっかりだったし。

そんなこと言われたら、誰だって“めんどくさいからしないだけなんだ”って思うはず。

そう思っていた内の1人であるあたしは、トーヤの言うことに瞬きを繰り返す。

トーヤは笑いすぎて出てきたらしい涙を拭いつつ、もう片方の手で突っ伏したままのハルセを指さした。


「ウチの弟くん、ホント不器用だから。独り暮らしさせるのも大反対だったくらい」

「そこまでじゃねえよ」

「いやいや、それくらいだろー。にんじん切るのに何十分かけてる、弟よ?」

「…………」

「包丁持つたびに指切り落としそうになるのは誰だっけ」

「それ以上暴露ったらお前コロス」


暴言を吐きつつ耳を塞ぎだしたハルセ。

そんな彼を、あたしは見つめた。

しないんじゃなくて、できないの?


「セナノちゃん」


呼ばれて、再びトーヤへと向き直る。