「言いたいこととか気持ちを我慢してるとさ、人間じゃなくなっちゃうよね」

「…………」

「言いたいことを言える口があって、いろいろなことを感じて表せる感情があって、それを伝える言葉があって。それって、人間の特権じゃんね」

「…………」

「それをしないまま死ぬのは、俺はあんまオススメしないかな」

「…………」

「ちなみに死ぬ前はタピオカジュース飲みたいよね」


果てしなくどうでもいい。


「なんでそう、余計なこと言うんですか……」


そうだよねって感動してたところなのに。

せっかく変人というイメージのままだったトーヤを見直そうとしたところで、これだから。

やっぱり変人は変人なのだ。

あたしは感心のあまり止めてしまっていた呼吸を再開するついでに、ため息をひとつ。

だけどトーヤは、あたしの呆れっぷりを気にもしていない様子で。


「で、セナノちゃんが怒った理由ってなに?」

「はい?」

「“怒らせろ”ってアドバイスしたのは俺だけど、でも理由ないと怒って飛び出すなんてことしないでしょ」

「まあ……」


理由を言っていいのかどうか。


ここ数分ずっと黙ったままのハルセへと目を向けると、ハルセはテーブルに突っ伏して、もう諦めたっていう状態だった。

だからあたしは、恐る恐る。


「その……ハルセの、家事をしなさすぎるところに……」


途端。