状況がまったくもって把握できない。
これはあたしの理解力が悪いんじゃなくて、何も説明してくれない2人のせいだと思うんだけど。
どういうわけかハルセはものすごく怒ってて、その怒りはあたしじゃなく、トーヤに向けられている。
そして対するトーヤは、愉快そうに笑いながらハルセを宥め……ようとしているのかどうかわからない言葉を返している。
とにかく、意味が分からない。
あたしは蚊帳の外、みたいな。
……そういえば、さっきハルセは、トーヤのことを“兄貴”って呼んでた気がするんだけど、気のせい?
そう1人で首を捻ってるあたしなんてお構いなしに、2人は……っていうか主にハルセが一方的にケンカしてる。
「お前マジふざけんなよ!?何セナノ連れ込んでんだよ!ケンカ売ってんのか!?」
「いやいや、ケンカ売ってるのはハルセじゃん」
「確実にお前だろ!セナノ見つけたとかメールしてきやがって全然違う方向教えただろうが!」
「信じるハルセも悪いよね」
「こっちは焦ってたんだっつの!嘘かホントかって考えるヒマあるか!無駄に走り回っちまったじゃねえかッ!!」
「いい運動じゃん」
「黙れッ!しかも携帯の電源切りやがって!信じらんねえッ!!」
「さっき居場所教えてやったんだからもういいだろー」
「何がいいんだっつの!ってかセナノになんもしてねえだろうな!?手ェ出してたらお前ブッコロスッ!!」
「ひでえー。そんなにお兄様が信じられませんかー」
「違う方向教えて電源切りやがったお前を信じろっつー方がムリだッ!!そんで“お兄様”じゃねえよ“クソ兄貴”だよ死ねッ!!そして死ねッ!!」
「2回も死ねませーん」
「うるせえ黙れッ!3回死ねッ!!」
「こんな弟を持った俺ってとっても不幸」
「お前みたいな兄貴を持った俺の方が不幸だッ!!」
……みたいなケンカがかれこれ数十分続いてる。


