「旅してると、結構そういうことあってね」
「……はい」
「自分の中で予想して妄想して、大きく考えてみて。でも実際、蓋を開ければなんてことないものだったりするってこと、多いんだよね」
「そうですか……」
「うん。それってさ、なんか面白いと思う」
「面白い?」
「そ。面白い。例えば今日、セナノちゃんが泣いていた理由は、恋人とケンカしたこと。けど、セナノちゃんが泣いてたホントの理由は、ケンカしたこと自体じゃなくて、自分の妄想」
「え……」
一瞬、怒りにも似た感情が沸き上がった。
何を勝手なことを、って。
だけどそれはホントに一瞬で、それよりもトーヤが言った“自分の妄想”という言葉がヤケに鼓膜に張り付いた。
スプーンをプリンに挿したまま、あたしはトーヤを見つめた。
トーヤはプリンを食べながら、悠々と喋る。
「だって、考えてみな?セナノちゃんは、泣いてる理由を俺に話してる時、“迎えに来てくれないし。嫌われちゃったかも”とか言ってたじゃん?」
「そう、ですけど……」
「でもそれ、自分の妄想ってことだよね」
「…………」
「実際、その恋人が自分のことどう思ってるかなんて、聞いてもないのにわかるわけないでしょ。セナノちゃん、自分でコトを大きくしちゃってるんじゃないの?」
「…………」
「ね?そういうのに似てるから、なんか面白い」
否定できない。
だってそうだから。
正論も正論だ。


