どこかの池みたいだけど。
どこだろう。
眉根を寄せて思い当る名所を思い出そうとするあたしに、トーヤは、
「それ、キンリンコってところ」
「キンリンコ……?」
「そ。金色の“金”に鱗、そんで湖って書いて、金鱗湖」
聞くだけではとても大そうな名前。
……なんだけど。
「……これ、そんなに凄そうなところでもないような……」
「だよね」
「しかも湖じゃなくて、池なんじゃ……?」
「うん、俺もそう思う」
「どこにあるんですか?」
「大分県」
「おおいた……九州?」
「そうそう。温泉とかで有名な大分県にありマス」
温泉で有名ってことは、なんとなく知ってる。
でも知ってるのはそれだけで、こんな池みたいな湖が名所なんて知らなかった。
写真を見たところ、それなりに人は居るみたいだけど。
けど、いちいち行かなきゃならないようなところでも、ないような。
だってホントに、こじんまりした池みたいだし。
「えっと……ここには何か居るんですか?」
「なんか魚が居た。看板見て名前見たけどなんだったか忘れたなあ。あとカモが居た。結構大きいカモ」
別に見るような生き物が居る、ということでもなさそうだ。


