あたしは小さなため息をひとつ、入り口から室内へと足を踏み入れる。

少し迷ってから、トーヤが座っている向かい側に、テーブルを挟む形で腰を下ろした。

それを見計らってか、入れ替わりに立ち上がったトーヤがキッチンへと足を向ける。


「セナノちゃん、おなか空かない?」

「えっと……」

「何か食べた?」

「……食べてません」

「そっか。ならおなか空いてるよね。何か食べる?」


冷蔵庫を開けて中を覗き込みながら、トーヤは続けて聞いてくる。


「えーっとね……プリンとケーキとアイスがあるよ。コンビニ産だけど」

「それデザートじゃないでしょうか」

「え?」

「えっ」

「デザートは主食でしょう」

「え?」

「えっ」

「もしかして、それ食べて生きてるんですか……?」

「当然」

「えっ!?」

「えぇ!?」


とてつもなくリズミカルな会話になったけど問題はそこじゃない。

この人はホントに変わってる。

デザートが主食なんてありえない。

栄養が偏りすぎて、早死にするんじゃないだろうか。


……あー、でも、この人なら平気そう……。

なんかもう、トーヤならなんでもアリな気がしてきた。

地球滅亡の瞬間にトーヤだけ生き残っても“まあトーヤだし”って思うほどに。