例え帰ったとしても、どんな顔してハルセに会えばいいのかわからない。
だって、ケンカなんてしたことないわけだから。
ケンカしたあとのことなんて、あたしにはわかるわけない。
謝ればいいんだろうか。
“ごめんね”って?
それって、ちょっと酷い。
そもそもあたしが怒ったのは、ハルセのせいだし。
あたしは、ずっと我慢してたのが破裂しちゃって、怒ったんだから。
だから絶対、謝るのはハルセの方。
……なんて考えてしまうあたしは、ホント可愛くないのかも。
でもわかんない。
“可愛い彼女”って、どんな彼女?
「あり?セナノちゃん、帰らないんだ?」
いまだ座ったままのトーヤが、不思議そうに聞いてくる。
元から“帰れない”って、わかってたんでしょ、アナタは。
その気持ちを込めて、トーヤを見下ろす。
するとトーヤはあたしを見上げて、ちょっと笑った。
「セナノちゃん、目が真っ赤」
「……わかってます」
「とっても腫れてる」
「知ってます」
「そんな顔で、ずっとここに居るつもり?」
「…………」
「野宿?」
「…………」
「女の子が野宿するのは、お兄さんちょっといやかなり許せないかな」
「…………」
「うん、やっぱウチおいでよ」
結局は、その答えに辿りついてしまうわけ。
他に選択肢はないんだろうか。


