「んじゃ、ウチ来る?」


ことの成り行きを話したのち、さらっとトーヤがそう言った時は、気持ちを顔に出さないタイプのあたしでもさすがに唖然とした表情をしたに違いない。

しばらく沈黙したあたしの“状況についていけない”気持ちを表したこの顔は、たぶん間違いではない。

誰でもこうなると思う。

それからあたしは瞬きをして、


「……はい?」


聞き間違いではないかと問い返す。

若干、聞き間違いであってほしいって思ってたりもする。

なのに、トーヤはさっきみたいにケロリとした顔で、


「うん、だから、ウチ来る?」


当然のようにそう答えた。


「……いや、なんでそうなるんでしょうか……」

「え、だってあれでしょ?セナノちゃん家出してきたんでしょ?」

「……まあ、帰れないって言いました、けど……」


ケンカして飛び出して来たのに、今更のこのこハルセの家に帰るのも気が引けた。

でも、荷物も財布も全部ハルセの家に置いたままだから、自分の家にさえ帰れないわけで。

っていうか、そろそろ電車もなくなる時間だし。

そういう感じで、家出モドキみたいなことになっちゃってるのは否定できない。

でも、だからと言って。


「……トーヤさんの家に行くのは、やっぱりちょっと……」

「うん?なんで?」


なんで、だと。