「じゃ、食べきれるように頑張ったことある?」
「まあ、ないこともないですけど……」
「悔しいよね、食べきれないと」
「そうですね……」
「あれ作った人はそれ狙ってるよね。食べきれるように挑戦したいから買う、みたいな人間の性を利用してる、みたいな?」
「それはないかと」
「セナノちゃん、そういうの考えない人?」
「はい?」
「人間の裏側を考えたりしない人?」
「“うらがわ”……?」
すぐには理解できなくて、聞き返す。
トーヤは頬杖をついたまま頷く。
「そ、裏側。例えば笑ってる人が居て、でも実際その人の気持ちが楽しいのかどうか、なんて他人にはわかんないじゃん」
「……そう、ですけど」
「そう思っちゃうと、その人が今ホントはどんなこと考えてるのか気になって、予想したりするよね」
「……はあ」
「つまり今、俺はセナノちゃんがどんなことを考えてタピオカジュースを飲んでいるのか気になっているということデス」
「…………っ」
何気ない会話の流れで、その話題に持ってくるなんて。
この人、変人紳士に加えて、ペテン師の可能性もあるってこと?
厄介すぎにもほどがある。
なんであたしは、こんな厄介な人に絡まれる運命辿ってんの。
あー、今日って、もしかして厄日なのかも。


