あたしはトーヤに貰ったタピオカジュースをまたひとくち飲んで、タピオカを噛む。

隣では相変わらず変人紳士がジュースの底を眺めていた。

噛み終わったタピオカを飲み込んで、あたしは言う。


「……蓋、外せばいいと思います」

「……その手があった」

「…………」

「あ、でもやっぱりやめる」

「…………」

「なんかそれ、負けた気しない?」


もう勝手にすればいい。

あたしはズゴッとタピオカを飲み込みながら、すでに味のしなくなったと思われるタピオカと格闘するトーヤから顔を背けた。

なんであたし、夜のコンビニの駐車場でこんな意味わかんない変人とタピオカジュースとか飲んでんの。

日本って国はどんだけ平和なの。


「……あー、ダメだ。降参」


そんな日本国の平和を象徴するような変人紳士トーヤは、タピオカを食べきることを諦めたらしく、ジュースを空の袋の中に放り込んだ。

息を吐きながら、自分の膝を台代わりに頬杖をつく。


「うーん……あのタピオカは果たして食べきれるような仕様なのか、否か」

「…………」

「食べきれる人、居ると思う?」

「あたしに聞かないでください」

「セナノちゃんは食べきったことある?」

「ありません」